全6回連載 宮口孝夫氏によるコラム|第1回「国産エレキギターの歴史と価値」

全6回連載 宮口孝夫氏によるコラム|第1回「国産エレキギターの歴史と価値」

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皆さんこんにちは。
比較的専門性が高く「苦手」と思われることが多い楽器について、もっと身近に感じられるようにコラムを連載する運びになりました。短い期間ですがよろしくお願いいたします。

エレキギターはバンドでもやらない限りTVで見かける程度だと思いますので、軽くエレキギターの歴史と国産エレキギターの価値を紹介したいと思います。

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エレキギターのルーツ

アメリカで1920年代~1930年代初めにかけて、広い会場でも音が聞こえるようアコースティックギターにマイクを付けたのが始まりだと言われています。
アンプで音を増幅することを前提で造られたエレキギターは、当時流行っていたハワイアンで使う「スティールギター」でリッケンバッカー社によって1931年に発売され、ボディはアルミ製、その形から「フライングパン」と呼ばれました。
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その後、ギブソンが1936年に"ES-150"、1952年に"レスポール"を、フェンダーが1949年に"エスクワイアー"と今に至るエレキギターを製造しはじめました。
特にフェンダーがネックとボディを別々に造り、それをネジで止めるという画期的な製法でエレキギター製造の大量生産を可能にしました。

この時代のギブソン、フェンダーは百万円単位で取引されますが、リッケンバッカーはスティールギターなので高くても十数万です。
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日本での始まり

日本でエレキギターが製造され始めたのは、洋楽ポップスが入り始めた1963年前後。
爆発的に売れ出したのはヴェンチャーズが初来日した1965年以降です。


この頃はビクターやコロンビアがエレキギターを製造していたり、TVのゴールデンタイムにアマチュアバンド合戦をやっていたりと、大変なバンドブームになりました。
ただこの時代、今のように海外の情報が手軽に入るわけではないので、エレキギターは写真を見たり、数少ない実物から想像して造っていたと思われます。 
マイク(ピックアップ)も粗雑でピックアップに口を近づけて声を出すと普通のマイクのように声を拾うくらい粗いものでした。
木工が出来るということで、ボディは長野県にある家具工場などで造られ、その後アリアギターなどで有名になる松木工場は元々仏壇屋さんでした。そのため楽器に適した木材は何かなどの考えはあまりなかったようです。

 

ビザールギター

当時、日本で一番人気があり有名な海外のブランドギターはギブソンとかフェンダーではなく、ヴェンチャーズが使用していたモズライトで、デザインが少しユニークなものでした。
木工の加工技術が日本は結構高く、手本は基本モズライトだったので今見ると複雑で他の国にないユニークなデザインのギターが多いです。



 
この頃の国産ギターは現在、総称してビザールギターと呼ばれています。一時、ビザールギターはどんな物でも数万円。物によっては十数万円で取引されていましたが、元々ギターとしては稚拙な物が多かったので現在万単位で取引されるのは4、5種類のギターだけです。それも機能よりほぼデザインです。 


ビザールギター(ちょっと変わったレトロなギター) テスコ

ただ海外に販売ルートを持っているとこのユニークなデザインがアピールするようで、結構有名な海外のミュージシャンが来日した時に、私の知り合いの店のネット広告を見て購入しに来ました。
「オリジナルパーツで完動」でなければダメですが、それなりの価格で売れています。
有名なメーカーはテスコ、グヤトーン、ファーストマン、ハニーなどです。

他の楽器店でも海外の方が求められることが増えているようです。
現在、あまり売れていない楽器販売で面白い商売が出来るかもしれません。
ちなみにモズライトが売れるのは日本だけです。
世界的に見ると異常な人気です。海外では高く売れません。1968年にUSAモズライトが倒産して以降日本の黒雲製作所とかトーカイで造っていたため、一時モズライトの権利を持っていると言う会社が日本に3社あったのですが、フィルモア社が裁判で勝ったため、それ以外のモズライトは現在偽物扱いされます。
保証書など確認して気を付けて査定して下さい。

モズライト (黒雲製) SuperExcel



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ビートルズ時代の到来

1966年ビートルズ来日以降、バンドブームに拍車がかかるのですが、使用ギターがヘフナー、エピフォン、グレッチなどだったため日本でギブソン、フェンダーがメジャーになっていくのは1970年代になって海外のロックバンドの情報が多数入ってくるようになってからです。

日本製のエレキギターのクオリティはギブソン、フェンダータイプのギターを研究することで高くなったので、国産レスポールモデル(ギブソン)、ストラトキャスターモデル(フェンダー)は1979年位から1985年位までが最高の造りになります。
この頃のグレコ、トーカイのギブソン、フェンダータイプのギターは現在も非常に高く評価されているた
め、定価が高額だったギターは当時の定価より高く売れるものが結構あります。

査定は中々難しいのですが、トライしてみるのは面白いと思います。
特に中国で非常に評価が高く、求められています。評価されているメーカーはグレコ、トーカイ、なのですがフェルナンデス、アリア、カワイなども面白いエレキギターを造っています。

その後国産のギターメーカーはギブソン、フェンダーに意匠権で訴えられたため、オリジナルデザインの時代になります。 
1980年代にフロイドローズという革新的なトレモロシステムが発売され当時流行っていた音楽との相乗効果で売れたのですが、オリジナルデザインギターは1部の特殊なギター(ミュージシャンモデルが多い)を除いて現在中古市場では高額では取引されていません。

フロイドローズ

 
1989年に始まったアマチュアバンド合戦のTV番組のおかげで凄いバンドブームになります。
その頃から国産メーカーは非常に安価なギターをアジア諸国で造り始めます。この安価なギターは中古としての価値はほぼありません。「査定は限りなく0」です。

2000年代に入るとオヤジバンドブームがありましたが、海外メーカーのギターが売れただけで、国産の高級ギターはほぼ衰退していきます。
現在、新品の販売価格が高い国産ギターは個人工房の物が増えています。
製品のクオリティは高いのですが、製作者や注文者の個人の嗜好が反映してる物が多いので、額面通りに中古査定するのは危険です。気を付けましょう。

以上が非常に簡単ですが国産エレキギターの歴史と価値になります。
楽器に対する考え方は色々ありますが、一つの指針にしていただければ良いと思います。


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質屋業報などで楽器の解説を行っている、楽器専門バイヤーの宮口孝夫氏による、コラム全6連載です。
第1回目は国産エレキギターの歴史と価値について解説していただきました。

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