【オリジナル】対談/前編 ラクサス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役 児玉 昇司 × 株式会社ものばんく 代表取締役 吉田 悟

【オリジナル】対談/前編 ラクサス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役 児玉 昇司 × 株式会社ものばんく 代表取締役 吉田 悟

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ラクサスを始めたきっかけ

吉田:初めまして、今日はよろしくお願いします。

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児玉:こちらこそ、よろしくお願いします。

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吉田:私は大学卒業後、一度証券会社に勤めてそこからこの業界で20年仕事をしてきたわけですけど、最近までブランドバッグのレンタルビジネスっていうのが、日本では正直成り立つとは思わなかったんですよね。そもそも、高額なブランド品のバッグをその瞬間だけ借りて、ライフシーンの中での所有欲を満たすという民族性が、日本人には無いんじゃないかと。

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児玉:はい。

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吉田:ところが、先日のニューズピックスの御社の記事を読ませて頂いて、ちょっと目からうろこで、「あ、なるほど、成り立つんだ。」と。そこで、まずお聞きしたかったのは4年前に事業を始められたのは、どのような勝算があってのことですか?

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児玉:はい。私自身は4回目の起業なんですけど、今まで色々事業をやってきた中で、いくつかマネタイズする為のポイント、イノベーションを起こす為のポイントがあるとわかってですね。一つは「高い物を安くする」、2つ目は「複雑な物をシンプルにする」、3つ目は「時間を短縮する」。この3つをやると大体マネタイズ出来る事が分かってきたんです。

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吉田:はい。

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児玉:例えば、携帯電話をなぜ使い始めたんですか、って考えると、うちの社員はやっぱり「便利だから」って言うんですよ。でも、大学生当時の僕は便利だと思っていたけど、高かったから持ってなかった。それから4・5年経って孫さんとかが安くしてくれたので、僕も含めて皆が持つようになったわけで、そういった、イノベーションやパラダイムシフトっていうのは、後になって気づくんですよね。あ、あの時にルールが変わったんだって。

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吉田:うんうん。

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児玉:なので、おそらく、もう今の時点で我々を追っかけたとしても遅くて、実は、4年前僕らがこのサービスを始めた時点で我々はゲームのルールを変えたわけです。それと、「高い物を安く」っていうのも、そもそも必ずしも所有じゃなくてもいいと気づいてて。これは、男性と女性の感覚の違いなんかもあると思うんですけど。

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吉田:そうですね。

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児玉:経営者の方って、男性の方が多いですよね?だから、今はまだルールとか世の中の流れみたいなものも、やっぱり男性中心に作られているんですよね。そして、男ってやっぱり、所有欲がある。

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吉田:ありますね。

児玉:何でも欲しがるんですよ。車とか、別荘とか、挙げればきりがないですけど。最近だと、実際には使わない英語能力も欲しがるじゃないですか。その前は資格欲しがっていたし。一番近いところで言うと、筋肉まで欲しがるわけですよ。ライザップとかいくわけじゃないですか。()

吉田:そうですね()

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児玉:そんなもの、何で欲しいんですかと。(笑)でもとにかく欲しがるわけですよ。それに対して多くの女性は、基本的に「今」このカバンを持って歩きたいっていう「目的」があって、買うのは「手段」だと思うんですね。でも、ほとんどの男性は買わないと意味がない、買う事が目的だっていう風に勘違いをしていて。大体こういうエラーを起こしているところって、チャンスがある事が多いんですよね。

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吉田:なるほど。

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児玉:そして、このゲームのルールが変わったことに対して、やっぱり業界の経営者の方々は、受け入れる事が出来ないはずだ、と思ったんですよ。当時一番私の強敵は誰だったかというと、御社のような、カバンをいっぱい持っている方々だったわけで。

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吉田:間違いないですね。
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児玉:でも、古物業を本業としてされている方々はシェアリングビジネスをやろうとしても、必ず戦略矛盾というのを起こすと思ったんです。なぜなら、皆さんは、「売る」のが商売だから。もし弊社のビジネスモデルをコピーしても、絶対に貸した後「売ろう」として、いずれどっちが軸かが分からなくなってくる。そのほかにもいくつか業界のエラーを見つけて、これはやれると思いました。むしろ、誰もやらないだろう、と。

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吉田:なるほど、面白いですね。業界の中での自己矛盾っていうのは、私もまさに抱えていましたから、よくわかります。では、4年前にこの事業に参入されて、実際に最前線で物を買いつけて回った時期もあると思うんですけど、その時に客観的に俯瞰して見た二次流通業界の印象ってどうでしたか?

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児玉:データ・ドリブンじゃないなって思いましたね。

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吉田:なるほど。

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児玉:ある店舗の陳列棚に置いてある商品が全てコピー商品だった、というのも目の当たりにして、そういうところとかはITで変えていきたいところも沢山あるなというのを感じましたね。もちろん、ITだけでは出来ないところもありますけど。

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吉田:まさにそうですね。私が昨年株式会社メキキを設立したモチベーションがまさにそこです。一昨年CASHBANK社が提供する即時換金アプリ)が出た時に、すぐに社長の光本さんに連絡をとって、会いに行きました。そして、1時間くらい色々お話をさせていただいた中で、自分の中で今まで大切にしてきた色んなものが崩れていく感覚があって。

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児玉:うん。

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吉田:自分たちはアナログ側の目利きを磨いてきた会社ですから。いわゆる目利きの暗黙知っていうのをデータとして持っている僕たちが、これからIT側の領域に入っていった時にどういった勝負が出来るか、やってみたいっていう思いが生まれて、今、まさにそれをやっているところです。

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児玉:僕もそれはすごい興味があって。僕はまだ今この2019年の段階で、AIとかITだけで真贋判定とかっていうのは、実現するかどうかっていうのはまだわかんないんですよね。多分もう少し時間がかかるんじゃないかと。だから逆にご意見を聞きたいんですけど、あれはどれくらい経ったら実現出来るんですかね?

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人ができることとテクノロジーができること

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吉田:真贋判定は、ある程度のブランドに限定すれば、うちのアプリに関して言えばあと数ヶ月で出来るようになると思います。ただ、私たちも真贋判定AIを目的としているわけではなくて、もっと別角度で、ユーザーがどう使っているのかとか、プロの場合はどこで失敗するのか、とか。どこを見落とすのか。そういうところを人工知能で学ばせていく方が、僕はメインだと思っています。

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児玉:なるほど。

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吉田:それよりむしろ、こういうコンテンツ配信の方がよっぽど業界の現場の方々には必要だと私は思っています。ただ今色んなところとお話をしていく時に、真贋判定っていうのはやっぱりキャッチーであるというのはあります。

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児玉:なるほど。真贋に関して言うと、うちの会社では実はバイヤーよりも目利きがある人がどんどん出てきていて。例えばアルバイトの子で、発送をしている子なんですけど、何気に買ってきている人よりモノを見ているので、わかるんですよね。やっぱり、多くモノを見ることが一番早いですね。

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吉田:そう思います。弊社も年間20万点くらいのブランド品を扱いますから、社員も1年居れば、物量で分かるようになるという点はあります。ただそれだけでは看破出来ないスペシャルなコピーっていうのも当然存在していて、それを分かるようになるには、感性と言うものも必要になってくる。だから僕らの業界でグッドバイヤーと呼ばれる人って言うのは、必ずロジックだけじゃなくて感性のバランスを持っている人だと思っています。

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児玉:なるほど。あと、うちは自社でリペアもするんですけど、自社で直しまくってみて驚いたのは、いいカバンってメンテナスをちゃんとすればすごく長持ちするんだ、と。うちが想定していたよりも全然償却しないんですね。うちの場合、貸して、返って来る度にフルメンテナンスするので、ある意味人類史上、そんなカバンの使い方をしているのは、僕らが初めてだと思います。


海外事業の可能性について

児玉:中国ってもうこの5年間ぐらい紙幣見たことがありませんと言う人ばっかりじゃないですか。給料とかも全部アリペイとかで入ってくる様な状態で、これって、まさに1時間働くと茄子5個とかいう感じなんだと思うんですよね。1年働くと車1台もらえるとか言う感覚。だからさっきおっしゃった通り、まさに本とランチの交換っていう感覚に非常に近い。

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吉田:それ、すごくわかります。

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児玉:僕はメルカリってフリマアプリだと思ってなくて、完全にシェアリングだと思っています。本来フリーマーケットっていうのは、物を売ったら手元に実際の1000円札が来ることだと思うんですね。

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吉田:そうですね。

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児玉:メルカリって売り上げはクラウドの中に預かっているので、ユーザーは感覚としては手放したTシャツとまた別の欲しい何かが交換されている感覚に近い。この感覚こそ、まさにさっき言われたモノとモノの交換であり、シェアリングだと僕は思っています。Yahoo!オークションと決定的に違うのはそこだと。

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吉田:まさに、そうですね。ここで、ちょっとお聞きしたいのが、御社のサービスをこのまま、例えば中国に持って行ったとしてマーケットフィットすると思われますか?

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児玉:いや、それはないと思います。シェアリングという考え方はまさに、文化の成熟度に比例していくと思うので、今の中国でこれが理解されるかっていうとまだ難しいような気はします。ただ、日本が5年かけて歩んだところまでを、今からの中国は半年で追いついてくるだろうということは思いますけど。
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吉田:なるほど、では、当面は国内でブランドバックメインでやっていくおつもりですか?

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児玉:いや、実は海外も視野に入れています。シェアリングという考え方に関してはやはり、文化の成熟度に比例すると思っていまして。マンハッタンでは10箇所でピッチをしたんですけど、一度も「ブランド品って所有しないと意味がないのでは?」なんていう質問はありませんでした。日本では100%といっていいくらい投資家からされる質問です。

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吉田:なるほど。

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児玉:向こうはそういうサービスがあるなら使ってもいいと思ってくれるんですけど、日本ではまだ、ブランド品を借りてまで使うなんて「はしたない」と思う風潮があるのかもしれないですね。あと、文化的側面とは別に、うちのビジネスモデルがフィットするには一定のフィルタリングがあるんです。まず、①保証金の制度があること、そして、②地元の方が利用している中古ブランド品の路面店があること。

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吉田:なるほど。

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児玉:これらの条件さえ合えば、他は数値化出来ているので、どこの国でも非常にリスクは低く展開できると思っています。ただ、ビザの関係もあるので私たち自身が展開するより、あちらの企業でフランチャイズなりノウハウを全提供してやっていくのもありかなと考えています。それにうちは在庫管理にしても、スキャナーで「ピッ」ってするだけで、それが何かがわかり、そのままPCにデータが入る。この様なシステムが揃っているので、経験が全く無い人でもその日から業務が出来ます。なので、FCなどの展開がしやすいと思っています。

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吉田:なるほど。あと、僕自身が思っている日本のマーケットの海外展開の可能性なんですけど。日本のBtoBマーケットって北海道から沖縄までBマーケットのプライスがほぼ一定ですよね。それだけマーケットが成熟しきっている、だからこそ利益が取れなくなってきているんですけど、でも、それこそ中国やアメリカみたいなマーケットが未成熟なところに持っていけばスケールしうるだろうなと思っています。

得意分野のかけ算で生まれるシナジー

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吉田:私たちが抱えている市場にはバッグは約10万点近く出品されますが、それ以上の在庫が全国に眠っています。現状は、これを右左に動かしていくためのスキームとして、「消費者から買って市場で売る」しかない、と。そこに、消費者にとっての新たな選択肢として、例えば資産運用とかもありではないかと。

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児玉:うんうん。

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吉田:例えば、物でファンドを組むなどもありじゃないかと思っています。エルメスファンド、とか、ヴィンテージファンドとか、色々ファンドを組んでいって資金調達をして、商品を運用させていくという考え方も出来るという。すると御社みたいなテクノロジーで何かを解決しようとする会社と、私たちみたいなアナログで在庫を持っている会社が組むというのは、すごく僕はシナジーがあるんじゃないかと思っているんですが、どう思われますか?

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児玉:まさにその通りだと思います。ブランドバッグの資産性って人気だけじゃなくて、耐久性も考慮する必要があるんですね。修理ばかり必要だとIRR(内部収益率)が下がるんですよ。てことは、人気のあるカバンかつ、耐久性のあるものじゃないと、資産性としては高くないわけです。

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吉田:なるほど。

児玉:うちは4年間やってきて、バッグに関してはそういった全てのデータがあって、ちなみにバーキンは必ず2.4%の利回りで回るんですね。100万円したとしても、必ず2.4%で回る。そんな金融商品なんてないですよね。バーキンはご存知の通り、修理すればピカピカに治る。だから、まさにおっしゃる通り僕たちは今、運用を考えている、そういうパートナーを探しているところです。

吉田:面白いですね、私も、この業界でずっと商売をやってきて、結局やりたいことって何なのってなったときに、「まだ動いていないマーケットを動かしたい」ってことなんだと気づいたんですね。というのも街行く人にランダムにアンケートを取った時に、メルカリ含めて物を売ったことがある経験がある人って現状では全体の30%もいないんですよ。ほとんどの人は「いらない物」は持っているけど、それを動かしていないというのが圧倒的多数です。おそらくその30%未満の人たちの中で出来上がっているのが今の二次流通マーケットに過ぎないと仮定するならば、まだまだ大きな潜在マーケットがあると。

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児玉:そうですね。

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吉田:なので、いらない物が流動化していく為には、必ずしも買取であったり質の預かりであったりする必要はなくて、御社のようなレンタルで資産を運用していくというような考え方もありますよね。結局はモノを持っているけど売ったことのない、サイレントマジョリティーの人たちを僕は動かしたい。僕らは、モノを持って来られたお客様に対して、日本銀行券と交換するというUXしか持ってないのが現状なので。

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児玉:そうですね。

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吉田:そこで今、ものばんくでは、モノとガソリンを交換とか、クリーニングと交換とか、地元の企業とマッチングしていきながら色々と実証実験をやっています。今度はTSUTAYAさんともそういう事をやらせていただく予定もありますし、うちのカフェで本を持ってきたらランチが食べられるという様な、モノとランチの交換とか。そういったものも全て、潜在マーケットを動かしていく一つの手段だと思っています。

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児玉:それは、面白いですね。

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吉田:もっと言うと、ものばんくに買取に持ってくるお客さんの選択肢がラクサスエックス(お客様が自分の所有するバッグをレンタルとして貸し出すラクサスのサービスの一つ)でもいいと思っているんですよ。そこをうまく全国の質屋・買取屋さんとうまく組み合わせていくと、大きなマーケットが作り出せるんじゃないかなと思います。

児玉:そうですね、私もそう思います。我々ラクサスと言う仕組みを、新たに真似して作らなくていいと思うんですよね、それは無駄でもあるし。それなら、我々に貸していただいた方がいいんじゃないかなと思います。そうすれば、うちがきれいに貸して返しますので。

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吉田:まさに、そう思います。

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後編に続く≫

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競争から共創へ。異業種シナジーで生まれる新たなマーケットの可能性についての対談をお届けします。

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