「オールドレンズ人気上昇中」
斉田 悌征
ここ数年オールドレンズの人気が出ています。オールドレンズって何?と思われるかもしれませんが、その明確な定義はありません。大体80年代ぐらいまでのレンズ、新しくともデジタルでの使用を想定していない2000年ぐらいまでのレンズを指しています。
人気の理由
人気の理由としては「写りの雰囲気がいい」というフィルムカメラ人気と共通の理由が第一に上げられます。最新レンズはどんなときも隅々までシャープに、逆光でもきれいに写ることを目差し設計されています。それに対しオールドレンズは(レンズによって異なりますが)、目指す部分と切り捨てる部分をある程度割り切って設計されました。周辺が暗くなったりし、逆光では光の乱反射が起こり、撮影条件によって安定しない描写をします。そういった写りの個性が評価されている、とも言えます。
※オールドレンズ作例
※ハイライトにじみ
※虹色ゴースト
オールドレンズの個性的な写りは今のことではなく、いつの時代も古いレンズは最新のレンズに比べて「個性的」でした。なぜ今注目されて人気が出ているのでしょうか。それは「ミラーレスカメラ」の登場、普及が大きな役割を果たしています。
ミラーレスカメラの役割
ミラーレスカメラがオールドレンズの復権にどのような役割を果たしたのか説明します。
レンズ交換式カメラはメーカー、時代によってカメラとレンズの結合部分(マウント)が異なります。となると古い時代のレンズは今のカメラには取りつかないはずですが、それを取り付けできるようにするパーツがマウントアダプターです。カメラとレンズの間に挟み込み仲立ちをします。
ミラーレスカメラは一眼レフに比べてボディが薄く作られています。カメラが薄いためスペーサーの入る余地が十分に確保できるわけです。またオールドレンズはピントも絞りもすべて手動です。ミラーレスは写りをそのままみられることが特徴ですので写り具合を事前に確認でき失敗のないように写真を撮ることができます。以前は1個数万円したマウントアダプターも、今は2000円ぐらいからとお手頃になり、試しやすくなったことも大事な要素です。安くなったといっても非常に精密な加工の要求されるパーツです。日本製の高精度なアダプターは愛好家の間では人気があり、いまだ高値であり中古需要も高いものがあります。アダプターはブランドによって中古商材としての価値は大きく変わると言えます。
最新レンズとの違い
私の考える完璧なレンズは、現実を相似形にそのまま写真に撮れるレンズです。しかし完璧なレンズは例えてみれば純粋な水のようなものであり、味わい、風味のないものといえます。オールドレンズの不完全さを味わいととらえることにより個性的な作品を作る、そのようにしてオールドレンズの人気は高まっています。最近中国メーカーのレンズが増えてきています。安価ながら高性能を追求したものもありますが、オールドレンズ的な味わいを重視したものも多くあります。最新レンズからオールドレンズまで、ミラーレスカメラの登場によりレンズ選びがまた一段と難しく楽しい時代となりました。
相場の注意点
80年代のオートフォーカス時代、00年代のデジタル時代、時代が始まるごとに互換性のない過去のレンズは使い道がなく相場は下がっていました。ミラーレスカメラとマウントアダプターによって、使用可能な道具として復権することになりました。もちろん中古相場も復活しました。ただし現役時代の価格よりも現在の人気と流通量、コンディションにより大きく上下しますので取り扱いには注意が必要です。
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